<実施報告>福岡県で「JCGAサイクリングガイド基礎検定講習会および体験講習会」を実施。

以下の事業を実施いたしました。

●令和6年度 福岡県サイクリングガイド人材育成事業
・事業内容と実施日程:
 1,講習会開催に向けての事前説明会:4/9(火)
 2,サイクリングガイド基礎検定講習会:第1会期=7/9(火)-10(水)、第2会期=9/3(火)-4(水)
 3,サイクリングガイド体験講習会:7/9(火)、7/10(水)
・会場:福岡市ヨットハーバーほか
・主催:福岡県
・主管:日本サイクリングガイド協会(JCGA)
・協力:リンケージサイクリング、ブリヂストンサイクル、バイクイズライフ、正屋、ジャイアントストア福岡
・講師:田代恭崇(JCGA理事)、飯島誠(JCGA-ELITE)、渋井亮太郎(JCGA理事)
・講師(福岡県内):岩崎正史(福岡/JCGA-MASTER)、山田大五朗(朝倉/JCGA-MASTER)、荒木茂人(大牟田/JCGA-LEADER)
・受講者:福岡県内のサイクリングガイド志望者およびサイクルツーリズム関連事業者

●事業の概要と趣旨
JCGAはサイクルツーリズム振興に熱心な福岡県の「サイクリングガイド人材育成事業」を令和5年度より受託。2年目となる令和6年度は、県内サイクルツーリズムの根幹となるJCGA認定サイクリングガイドのさらなる拡充を期して、前年度に引き続き「JCGAサイクリングガイド基礎検定講習会」を主軸に実施いたしました。
一方、サイクルツーリズムの窓口となる観光事業者等にとっては、JCGA認定サイクリングガイドは専門的なスキルや知識の面でハードルが高いため、そうした関係者にもまずはサイクリングガイドの役割と要件を理解いただく機会として「サイクリングガイド体験講習会」を追加。基礎検定講習会の第一会期と併催することで、JCGAサイクリングガイドの理念や技術体系、ツアーの実際、基礎検定講習会の内容とレベル感までリアルに体験できるため、自身が出来る出来ないかはさておき、サイクルツーリズムに携わる立場で知るべきレベル感を共有いただけました。
また、実施に当たっては、継続事業としての成果向上を目指し、前年度の事業でJCGAサイクリングガイド認定を受けた県内メンバーも講師および講師補として登用しています。

●福岡県JCGAサイクリングガイド基礎検定講習会
・募集告知と事前の自主学習
5月13日付でJCGA公式WEBに開催告知を公開し、6月初旬の申し込み締め切りまでに応募者の資格要件審査を経て8名の参加およびJCGA入会申請(うち1名は前年度受講につき既会員)を受理。6月14日付で「JCGA公認サイクリングガイド養成テキスト(第2版)」と「限定公開のオンライン動画URL」を受講者に展開し、事前の自主学習から講習がスタートします。


<限定公開YouTube動画により効果的な自主学習が可能>

・第1会期=7月9日(火)~10日(水)
第1会期の2日間については、後述する「福岡県サイクリングガイド体験講習会」と併催。
初日の午前中は、検定講習と体験講習の受講者、講師までの全29名を4グループに分け、講師が引率するガイドサイクリング模擬ツアー体験として講習コースを1周回。その後は会場内で交通法規とサイクリングガイド実務についての座学を行い、事前学習の成果を相互に確認いたしました。。
午後と2日目については体験講習と分かれ、検定講習の受講者だけで引率実走、ブリーフィング、チューブ交換の実技講習を実施。短い会期でJCGA認定を目指す受講者に向けて密度の濃い時間となりましたが、ちょうど会期2日日から急に夏の暑さが本格化してしまったことで熱中症リスクが高まり、途中で屋内休息を指示された受講者も。結果として熱順化の重要性について再認識する機会となりました。


<第1会期スケジュール:1日10〜12時間もの講習に耐える身体能力が受講要件>

・引率実習の設定ルート
福岡市内郊外のバイパスから狭い市街地まで様々な状況を網羅する6.9kmの周回ルート。昨年の同講習で設定した9.3kmルートを元に、基礎検定レベルの受講者が無理なく周回を重ねられるよう距離を短縮しています。なおJCGA講習では、リアルなサイクリングツアーであれば採用したくない都市部の狭路や複雑な交差点を敢えてルートに盛り込んでいます。それは、例えばしまなみ海道や琵琶湖一周、霞ヶ浦、富山湾岸などナショナルサイクリングルートのツアー現場においても、ホテルや駅からサイクリング好適ルートまでの間には必ずこうした難しい場所が登場するため、引率責任者たるサイクリングガイドとして最低でも十数回は特殊な経験を重ねることで、要求されるレベルまで最低限は理解しておくべき、という考えに基づいているからです。


<講習ルートはサイクリングに特化したアプリで作成>

・第2会期=9月3日(火)~4日(水)
自主学習および練習時間を確保いただくため、第1会期からの期間を通常のJCGA講習では4週間のところ2倍の8週間に設定しました。しかしながら、この夏は観測史上最高レベルの酷暑に見舞われ、受講者のほとんどが思うように乗ることができなかったようでした。第2会期は、講師と受講者を合わせて全12名で実施。9月でしたが残暑というよりは盛夏と言うべき酷暑となり、身体を氷で冷やすなどの対策を強いられました。初日に引率、ブリーフィング、チューブ交換の実技講習を中心に実施し、各受講者の習熟度を講師が見極めた上で、翌日の検定受験の是非を通達しました。今回は未達部分も若干見受けられたものの、対象となる7名全員に検定受験許可を与えることとなりました。
翌日の検定は引率走行と筆記試験の2科目となります。なお、筆記試験をクリアすることが基礎検定の受験要件となるため、本来は先に筆記試験を実施してから引率走行を行うべきなのですが、現在の検定形式になってからの5年間で筆記試験の点数不足で受験資格を失う受講者は皆無でしたので、日照と気温が最も高い正午前後の3時間を冷房の効いた屋内とする変則的なスケジュールで実施しました。


<T字交差点の二段階右折は待機場所が難しい>


<左折専用レーンの直進は停車中の左右位置が重要>      

(参考)JCGAサイクリングガイド基礎検定について
JCGAサイクリングガイド基礎検定として、交通法規およびガイド実務についての筆記試験と引率実技試験を実施。1周10kmにも満たない検定コースでサイクリングガイドの引率技術を測るなど難しいのですが、まずは短距離の慣れた周回コースなどノーミスで引率できるレベルでなければ実務で通用しないという考え方に基づき、JCGA創設以来一貫して減点方式での検定を採用しています。
例えば、1日50kmのツアーを1ヶ月間にのべ10日間引率すると全500km。もしガイドが10km毎に2回の引率ミスを犯すと、月に100回もお客様を危険な目に遭わせてしまうことになります。もしそれが交差点での歩行者保護義務違反であれば最悪は対人事故に、一時停止指定場所での不停止や信号無視であれば対車両の重大事故に至る恐れがありますので、やはりそのレベルではサイクリングガイドやツアーガイドなどと名乗る資格がないことは明らかです。JCGA/JCA検定を「厳しすぎる」とする声も一部にはありますが、日本の交通環境とサイクリングツアー実務を考え合わせれば最低限の引率能力や交通知識は必須であり、それらを問わずしてサイクルツーリズムをビジネスとして論ずるのは不十分と言わざるを得ません。
JCGAはこうした考えのもと、サイクリングガイドが自覚すべき理念や目標とすべき技術水準を共有いただくために、基礎講習や検定を実施し続けています。

・検定結果と公開
今回は対象者7名のうち6名がJCGAベーシック認定を受けてJCGA公式ジャージに袖を通すことになり、JCGA公式WEBの会員サイクリングガイド一覧に個人ページが開設されました。


<JCGA公式WEBのガイド一覧ページ:赤ワク内の6名が今年の認定者>

●福岡県サイクリングガイド体験講習会

・7月9日(火)
本講習会については基礎検定講習会との併催となるため、運営上の都合から体験講習会参加者を座学講習のある初日にまとめたいというJCGAの意向に沿うかたちで福岡県側に参加者をとりまとめていただいた結果、この日は上限数をやや超える16名に参加いただきました。講習会は朝8時前からスタート。まずは基礎検定講習と合わせて25名の参加者をサイクリングツアーの参加者に見立て、サイクリングガイド役となる講師4名が受付順にレンタルバイクおよびヘルメットのセッティングもしくは自己所有のバイクの点検をおこないました。講習会開会の挨拶からそのまま全体ブリーフィングに移り、出走前に必要な情報共有の内容や理念についてリアルに体験いただきます。ブリーフィング終盤にグループ分けをして、講師4名が各6〜7名を率いて講習ルートを1周回する模擬ツアーを行いました。
会場に戻ったら会議室で座学。サイクリングガイドとして必要な交通法規とガイド技術などについて解説しました。基礎検定講習会の受講者は事前に養成テキストを郵送された上で動画による自主学習を積み重ねていることが前提のため、座学は1時間半と非常に駆け足ではありますが、体験講習の参加者にとっても法規の無知や誤解、サイクリングガイドとしての技術や心構え等について、多くの気付きがありました。


<リーダーガイド役の田代講師が全員にブリーフィング>


<座学についても基礎検定講習と合同開催>

昼食休憩をはさみ、午後からは体験講習会として別メニューで実施しました。まずは公園内で、乗り降り、自転車操作、振り返り、ハンドサインまでの基礎練習。参加者の自転車スキルがまちまちではあるものの、それぞれのレベルなりに技術の難しさや大切さを体感できたと思われます。その後、2グループに分けて講習コースを2周回。各人のレベルに応じて途中で先頭ガイド役を交代しながら、車線での左右位置や交差点の待機方法、後方確認のタイミングなどについて講師が解説。予定通り17時ごろに終了しました。


<デモツアーに備えてJCGA福岡県メンバーとルート試走>

・7月10日(水)
この日は参加人数が少なく講師1名と参加者6名の7名1グループで引率走行が可能でしたので、主任講師の渋井によるツアー引率デモンストレーションと座学講習のあとは、前年の同事業でJCA公認サイクリングガイド/JCGAサイクリングガイドマスター)となった福岡市内在住の岩崎正史を講師として基礎練習と引率講習を実施。本事業の課題のひとつである「県内JCGAサイクリングガイドによるライト講習」というかたちが実現したことになり、次年度以降の事業に向けての発展性を確認することができました。

以上です。

JCGAは、本事業のような地域のサイクルツーリズムを支える人材育成に今後も取り組んでまいります。サイクリングによる地域の活性化を願う上級サイクリストや観光事業者の方は是非ご参加ください。