<実施報告>「福岡県サイクリングガイド基礎検定講習会」を初開催。

■ 表記の講習会を以下の通り実施いたしました

・日程:事前説明会=4/11(火)、第1会期=5/10(水)-11(木)、第2会期=6/14(水)-15(木)
・会場:福岡市ヨットハーバーほか
・主催:福岡県
・主管:日本サイクリングガイド協会(JCGA)
・協力:リンケージサイクリング社、ブリヂストンサイクル、ジャイアントストア福岡
・講師:田代恭崇(JCGA理事)、飯島誠(JCGA-ELITE)、渋井亮太郎(JCGA理事)
・受講者:福岡県内の現業サイクリングガイドおよびサイクリングガイド志望者
・受講者数:事前説明会=21名(※うち15名が受講検討)、第1会期=11名、第2会期=9名

■九州エリア初のJCGAサイクリングガイド講習会

サイクリングツアー好適地として日本有数のポテンシャルを有する九州。その拠点となるべき福岡県は、2018年に「福岡県サイクルツーリズム推進協議会」を設立。10の広域推奨ルート設定や、受入環境(サイクルステーション、サイクリストに優しい宿)および走行環境(矢羽根型路面標示、案内看板)の整備、特設サイト(Cycle & Trail Fukuoka)による情報発信などに取り組んでおり、西鉄サイクルトレインの定期運航開始や専業事業者によるサイクリングツアーなど民間の活動も熱を帯びてきています。こうした環境下、より多くの国内外サイクリストに福岡県および九州各地のサイクリングを楽しんでいただくために、サイクリングツアー市場の拡大を目指すこととなり、その担い手となるサイクリングガイドを育成する事業を本年度より開始。JCGAは、本格的なスポーツサイクリングを安全かつスムーズに引率できるサイクリングガイドを育成・認定する団体として福岡県から事業を受託し、サイクルツーリズムの基盤づくりの一端を担います。

■事前説明会

本事業は、秋の大型サイクリングイベントから逆算して、初年度ながら講習会期を年度初期の5-6月に設定したため、受講者候補を含む関係各位に短期間で一定の理解をいただく必要があり、対面(一部オンライン)での事前説明会を実施しました。県内各地の現業サイクリングガイド、ロードレースのプロチーム関係者、スポーツサイクルショップのスタッフ、行政の観光事業関係者などの総勢21名に対し、JCGA代表理事の渋井からJCGAサイクリングガイドの技術や理念、講習会の内容などについて一通り説明したあと、質疑応答を相当時間行い、さらに終了後も任意のメンバーで飲食を交えてディスカッション。これまでの一般公募講習会では、ガイドは自分自身で情報を正しく読み解くリテラシーも必要として、説明会などを敢えて実施しなかったのですが、今回初めて実施したところ、JCGAにとっても様々な気づきを得られた有意義な機会となりました。
今後は一般向けのオープン講習会についても事前説明会の実施を検討いたします。


<写真>講習会の趣旨説明を熱心に聞き入る参加者。

■第1会期=5/10(水)- 11(木)

説明会翌週の書類選考を経て11名のJCGA入会と参加申し込みを受理し、まずは「JCGA公認サイクリングガイド養成テキスト(第2版)」と限定公開のオンライン動画を併用する自主学習から講習をスタート。第1会期初日の午前中には、交通法規やサイクリングガイド実務についての座学を通じて個々の学習成果も確認し、残り1日半は時間と体力の許す限り実技講習に時間をあてました。


<写真>座学はJCGA理事の田代講師が担当。


<写真>まずは人車のいない道路でハンドサインや後方振り返りを確認。


<写真>講師込みで7名ずつ2グループに別けて引率実習。

引率実習のために設定したルートは、福岡市内郊外のバイパスから狭い市街地まで様々な状況を網羅する9.3kmの周回ルートです。JCGA講習では、リアルなサイクリングツアーでは出来るだけ採用すべきではない都市部の狭路や複雑な交差点を走ります。それは、例えば、しまなみ海道や琵琶湖一周、霞ヶ浦、富山湾岸など、ナショナルサイクリングルートの現場でも、ホテルや駅からサイクリング好適ルートまでの間には必ずこうした難しい場所が登場するため、引率責任者たるサイクリングガイド として最低でも十数回はリアルに経験を重ね、理屈ぐらいは押さえておくべきだと考えているからです。


<写真>特殊な交差点で左折専用車線から二段階右折。


<写真>待機場所のないT字交差点での二段階右折。


<写真>JCGAは歩道利用における技術も追求しています。


<写真>センターラインも路側帯もない道路での走行位置や安全速度を共有。


<写真>引率実習ではコース途中の休憩を兼ねて講師が解説します。

なお、今回は自主学習開始から第1会期まで3週間程度しかなかったため、学習成果の個人差が通常の講習会より大きかったように感じました。コロナ禍対応で自主学習を採用して以来、自主学習の達成度とリアル講習での引率技術の良し悪しが比例する印象が強く、今回も、ハンドサインやチューブ交換といったJCGA独自のメソッドを含む実技で、個人練習の積み重ねを第1会期に確認できた受講者は、最終日の検定成績も上位でした。一方、第1会期までに自主学習に時間を割けなかった受講者も、自身の不足を自覚して第2会期までにキャッチアップできれば問題はありませんので、その意味では第1会期から第2会期までの日数をもう少し開けられると良いのかもしれません。今後の日程検討に反映いたします。


<写真>実技講習の成果は自主学習に大きく左右されます。

■第2会期=6/14(水)- 15(木)

第1会期から2名を減じた検定受験候補者9名と講師3名の12名で実施。今回は福岡県による委託事業ですので、第1会期で検定受験に見合う技術と習熟度が確認できた基礎検定受験候補者のみを対象として、特に現業ガイドなどの5名についてはさらに上級のJCA検定を課して、よりハイレベルな技術の確認と共有を目指しました。受講者全員とも第1会期からの4週間でかなりの自主練習を重ねてきたことが伺え、検定ではトータル2カ月間の達成度を自己確認いただくことができました。


<写真>講習中のリアルパンクにも落ち着いて対応。


<写真>JCGAはヘルメットの被り方説明にまで緻密さを求めます。


<写真>JCA検定対象者は1日から実技試験を実施。


<写真>チューブ交換の習熟度も互いに確認します。

第2会期の2日目は、JCGA基礎検定およびJCA公認検定として、交通法規およびガイド実務についての筆記試験と引率実技試験を実施。本来であれば、たった9.3kmの検定コース1周でサイクリングガイドの引率技術を測るなど困難ですが、まずは短距離の慣れた周回コースをノーミスで引率できるレベルでなければ実務で通用しないという考え方から、JCGA創設以来一貫して減点方式での検定を採用しています。
例えば、1日50kmのツアーを1ヶ月で 10回引率すると全500km。もしガイドが10km毎に2回引率ミスすると、月に100回もお客様を危険な目に遭わせてしまうことになります。それが交差点での歩行者保護義務違反だと対人事故に、一時停止指定場所での不停止や信号無視であれば対車両の、いずれも重大事故に至る恐れがありますので、やはりそのレベルではサイクリングガイドやツアーガイドなどと名乗る資格がないのは明らかです。JCGA/JCA検定を「厳しすぎる」とする声もありますが、我が国の交通環境とサイクリングツアー実務を考え合わせれば最低限の引率能力や交通知識は必須であり、それらを問わずしてサイクルツーリズムをビジネスとして論ずるのは不十分と言わざるを得ません。JCGAは、サイクリングガイドが自覚すべき理念や目標とすべき技術水準を共有いただくために、基礎講習や検定を実施し続けているのです。


<写真>90分間の筆記試験。自由記述も重要です。


<写真>検定でリラックスできる人はきっとガイド向きです。

■検定合格者
会期終了後、JCGA技術委員会およびJCAサイクリングガイド普及委員会での合議を経て、以下の8名が公式ジャージ着用会員として認定されました。また、うち2名については、スポーツサイクリング業界での実績や今後の事業展開等を鑑み、JCGA最高位の「JCGA公認/JCA認定サイクリングガイド マスター」として委嘱させていただきました。

・JCGA公認/JCA認定サイクリングガイド(5名)


荒木 茂人


荒木 愛美


山田 大五朗


奥村 貴


岩崎 正史

・JCGA公認サイクリングガイド ベーシック(3名)


浅川 華子


檜室 建斗


吉村 裕規

なお、1会期の講習でJCA公認5名を含む8名のJCGA公認サイクリングガイド合格者を得たのは現在の資格認定制度となって以降では最大の成果となりました。本講習受講者の今後の活動が、福岡および九州全体のサイクルツーリズムの発展に寄与されることを期待しています。


<写真>講習を満了すれば受講者も講師もガイド仲間です。

なお、諸事情が折り合えば来年度以降も本事業を継続する意向ですので、全国標準のサイクリングガイド技術を体得されたいという福岡県内のサイクリストは、ぜひ上記のメンバーとご交流いただくなどして、次回開催に向けた準備をスタートいただければと思います。

以上。